それは日常茶飯事。
目覚ましが鳴り響くのを止めて、もう一度寝る。
所謂二度寝。
それが気持ちよくて止められなくて、ついついしてしまう。
それと、もう1つ理由があって―・・・。

目覚ましを切って、眠りに落ちるのはあっという間。
誰かが入るのも気付かずに、眠り続けていた。
急に、頬にひんやりした物が当たり、吃驚して目が覚める。

「うわっ」
「起きたかい、サトシ」
「シゲルの手か、吃驚した」
「吃驚するほど冷たいか」

首を縦に振り、取り敢えず手を温めようと思い
シゲルの手を両手で包み込んだ。
冷え性なのか、コイツ・・・。

「子供体温だね、サトシは」
「うるせー、性格が冷めてるからそうなるんじゃないのか」
「怒りっぽいから血圧が上がって、体温も高いのかな?」
「うぐっ」

何も言い返せなくなった。
シゲルは勝ち誇ったかのように笑む。
少し悔しいが、確かに怒りっぽいのは否定出来ない。

これがもう1つの理由。
好きな人に起こされるって幸せだと思う。
そんな幸せをかみ締めてる自分って、凄いって思う。

そんな事を考えながら、まだ少し眠たい目を擦りながら、着替えを済ませて
1階に降り、朝食を済ませてから、シゲルの家に向かった。
今日は研究の資料を少し纏める作業が残っているらしく
シゲルはパソコンに向かって作業を始めた。

「休みの日まで仕事か、大変だな、研究者は」
「楽しいからいいんだけどね」
「楽しいならいいんだけどよ」

静かな部屋に響くキーボードの音。
コイツは一体何時に起きて、何時に寝ているんだろう。
いつも起こされるって事は、自分より前に起きているって事だし
寝る時だって、先に寝るね、って言うのは俺のほうだし。
電話先での声は別に眠そうな訳じゃないし、まだ寝ないとかいうし・・・。

部屋に差し込む日差しが心地良くて、段々眠くなってくる。
重たい瞼を一生懸命あけながら、シゲルの様子を見ると
まだ頑張って作業を続けているみたいだ、こっちが見てることも気付いてない。
ああ、もう駄目だなぁ・・・まどろむ世界に身を委ねた。

しばらく眠っていたらしい。
綺麗な青から、少し哀愁漂う橙色に変わっていた。
シゲルの様子を見ると、彼もどうやら眠りに落ちたみたいだった。

「コイツが寝るとこはじめて見たなぁ」

今しか見れないと思い、マジマジと顔を見る。
サラサラの髪、長い睫毛、整った顔、言う事無しだ。
寝ている時もクールとか、絶対許せないなぁ
落書きしてやりたいなー、いいかも、しちゃおうかな。
でも、そんなことより・・・

頬に口をあてようとした瞬間

「うわ、僕寝てたのか」
「ひぃっ」

急に起きたシゲルに驚いて、変な声が出る。
顔が近い事に気付いた彼は、少し顔を赤らめて

「サトシ、僕に何かしようとした?」
「な、何も!寝てるのかなぁーって思ってさ」
「・・・まったく・・・寝ている姿を見られるのは恥ずかしいから」

きに起きるな(2009/08/16)